ブラジルから来た少年/アイラ・レヴィン 1976年 評価3


 ブラジルである若い男が殺された。彼は殺される直前に、ユダヤ人でナチスの残党を探すユーベルマンに、この2、3年間に94人の65歳の男が殺されるという伝言を残していた。その情報元はブラジルに潜伏するナチ残党。その一員であり権力者の、生物学者メンゲレはこの作戦の遂行に執念をかたむける。メンゲレは、完全なクローン人間を作ることに成功し、死んだヒトラーの血液から94人のヒトラーのクローンを作り出し、ヒトラーと同じ家庭環境の夫婦に養子に出した。そしてヒトラーの父親は65歳で病死していた。

 発想はいいと思うが、よくよく考えると、遺伝子が同じでも育った環境により人間は如何様にも変わるのは当然で、このために物理的環境を同じにして、さらにこれを補完するために父親を殺すという、本作の肝になる部分の行為自体がなんか馬鹿馬鹿しい。

 また、ジャンルとしてはサスペンスになるのだろうが、主に動いている人間が60歳を超えたおじいちゃんであるため、スピード感やスリルに乏しい。