ファイアフォックス/クレイグ・トーマス 1977年 評価5
アメリカ−ソ連の冷戦当時、ソ連はミサイルの発射・誘導を脳波で操り、最高速度マッハ5、赤外線を除くあらゆるレーダーに感知されないという最新鋭戦闘機を開発。戦闘機開発に大きな遅れをとっていた欧米は、この戦闘機を盗み出すため、ベトナム戦争で抜群の飛行技術を示したガントを単身ソ連に送り込み、テスト飛行お披露目の際に乗っ取ることを計画する。
話の筋は至極簡単である。しかし、屈折した精神を持ち、単なるパイロットでしかなかったのに単身ソ連に送り込まれるガント自身の緊張感や、ソ連側で協力する工作員やアメリカの軍人達の潔く男気にあふれる行動、ソ連側の高官たちの政治的なパフォーマンス、最後の戦闘機での戦いなど、周辺のストーリーが実に丁寧に描かれていることにより、凄まじい緊迫感。まさに手に汗握る展開が続く。多少強引な展開がなくはないが、やはり人間がしっかり描かれていないとだめだなと再認識。本作はスリルと男気を求める読者にまさしくお勧めの一冊である。