時計じかけのオレンジ/アンソニー・バージェス 1962年 評価3
おれアレックスは15歳なんだが、昼はたまにはくそ学校にいってるけど、夜はドルーグ(なかま)3人とドラッグいりミルクを飲んでハラショーな気分になりながら、そこらへんでのさぼっているくせえおいぼれをバッチリぶんなぐったり、デボチーカ(おんなのこ)と”入れたり出したり”、ちょいとカッター(かね)が必要になったら、てきとうないえにしのびこんでよ、兄弟、ぶん殴って真っ赤な血をだらだらながさせてやってふんだくってみたり。そんなあるひ、チキショーなドルーグのばかなやろうどもがオレをはめやがってよ、兄弟。バッチリ、ミリセント(おまわり)につかまっちまった。それで、おれはとんでもない暴力野郎ということで、新しいくそ治療法の実験台にされちまったってわけさ。
というような文章が徹頭徹尾貫かれるという、前代未聞の小説である。とにかく全編暴力にあふれており、本だからその描写も生々しくて、正直気分が悪くなる感じ。アレックスは一旦、強制的にまともな人間に戻ったかのようになるのだが、世の中が変わらなければ、まともな人間は生きていけない環境は同じであり、結局元に戻ってしまう。暴力が横行する近未来は無能な政府によって作られ、決して治らないということを主眼とした風刺小説といえるだろう。作風からいって、嫌いな人は完全に嫌いな小説だろうし、私も小説を先に読んでいたら映画版は観なかっただろう。
キューブリックの映画版は映像がとてもスタイリッシュで、クール。また、アレックスのクラシック音楽好きという性癖を上手く取り込んだサウンドトラックも素晴らしく、映画が小説にほぼ忠実と言うこともあるが、読んでいても映画の情景がどうしても重なってしまう。それぐらいインパクトのある映画であるため、内容の暴力性は度外視して、アレックスの(方向に共感は出来ないが)魂の開放に惹きつけられるのである。正直、映画が小説に勝る数少ない事例といえるだろう。