点と線/松本清張 1958年 評価3
福岡県の海岸で、汚職事件で揺れる省庁の課長補佐と銀座の料亭の女中・お時が青酸カリを服毒した情死体として発見された。この二人が東京から寝台列車で旅立つ姿は、同じ料亭の女中二人と機械工具商の安田に目撃されており、一般的な情死の線が濃厚となるのだが、お時が途中下車したことが状況証拠から明らかになり、本庁の刑事・三原はこの情死に汚職事件が絡んでいるとみて捜査を進める。
まず、キーとなる列車の乗り継ぎは、普通に飛行機で移動すればいいとか、新幹線に乗れば1日のうちに九州から北海道までいけるとか、現代では信憑性を感じられないといういかんともしがたい弱点があろうと思われる。確かに色々なアリバイ崩しが成果を挙げなくて、どのように犯行を立証するのだろうという、「刑事コロンボ」的な面白みはあるのだが、かなり回りくどい捜査をしている印象を持ってしまう。それと、ラストは、犯人とその妻は服毒自殺し、三原の手記による本事件の展望でなんとなく全貌が語られるのだが、それが事実であるという証拠はどこにもないという、ぼやっとしたなんとなく収まりが悪い結末になっている。
いくつか本作のミスというのは指摘されているのだが、私が決定的におかしいと思ったのは、服毒した体を解剖して、近くにあったオレンジジュースが胃袋に残っていたかどうかの調査さえしていないという点。とはいえ、アリバイ崩しというジャンルを確立したのが本作ということであるので、その意味で、歴史的価値はあろう。