冷血/カポーティ 1965年 評価3


 カンザス州の名士クラター家の4人が惨殺された。両親と若い娘と息子、総てが愛されるべき人間であり、恨みを買うような家族ではなかった。どのような凶悪犯かと関心を集めた事件であったが、約1ヵ月後に捕らえられた容疑者は特別な異常性を感じさせる人間ではなかった。

 3年間にも及ぶ関係者及び容疑者本人への取材を経て書かれた、ノンフェクション・ノベルの金字塔。作者を描いた映画も2005年に公開されていて、犯人の異常性に興味を示したが、結局精神的な欠陥がやや認められるだけという結果に落胆したということらしい。

 取材の積み上げ、そして編集という膨大な作業から浮かび上がる犯罪心理という面での読み応えはあるが、その裏返しとして、話の本筋とは関係ない登場人物が多く、読み物としては散漫な印象。また、死刑の判決が出たあとは、他の死刑囚の記述と、本来のクラター家殺害犯人の記述がほぼ同等になるなど、対象への興味が激減していることも伺え、なんとなくまとまりがない。