アクロイド殺し/アガサ・クリスティ 1926年 評価4


 ここ数年読んでいる日本のミステリー小説というものが、犯人の異常性やストイックなところに、常人を超越した行動の根拠を求めているため、どうしてもミステリーではあっても推理小説としては納得できない部分が残っていた。学生時代(特に中学時代)に読んだものはもっと謎解きの面白さがあったぞ、と思い、中学時代によく読んでいたアガサ・クリスティの作品の中で、特に人気が高い本作をチョイス。実に30年ぶりぐらいの再読となった。

 イギリスの片田舎で、大地主ロジャー・アクロイドが自身の邸宅で殺害された。殺害時間帯には客人や使用人が10人近くいたが、殺人に気づいた者は誰もおらず、関係者の証言からは行方をくらましたロジャーの養子が一番怪しいと思われるのだが、決定的な証拠はなかった。そんな中、その街に隠居してきた探偵業務を引退した名探偵ポワロが一役買うことになる。

 これこそ推理小説というものだろう。例えば映画なら「シックス・センス」のように、繰り返したくなる面白さだ。ほとんどの登場人物に動機とアリバイがあり、どの人間も超人ではない。そんな状況の中で真犯人を見つける名探偵ポワロの推理に純粋に引き込まれていく。予想外(とはいってもいくつかの候補のひとつには挙げられるのだが)のラストが見事で、読み返してみるとなるほどと思えるほどよくできている。これほど面白いなら、もう少しアガサ作品を読んでみようと思う。

 ただ、偶然的な出来事がその殺害の夜に集まって起こっているという点だけがプロットとしてうまく出来すぎで、そこだけが減点にはなるが、少し細かい評点を出すとすれば4.5点を献上できる。