魔球/東野圭吾 1984年 評価:3
無名の進学校を甲子園出場まで導いた天才投手・須田武志。しかし、味方の失策から、春の甲子園で1回戦負け。その後、野球部の主将である、唯一の須田の理解者である捕手・北岡が、愛犬と共に殺された。そして数日後には、須田が右手を失くした姿の死体で発見される。双方のメッセージから「魔球」がキーワードとして浮かび上がってくる。
東野圭吾のミステリーを読むのは「白夜行」に続き2冊目。共通するのは犯人が常人離れしたストイックさを持っていること。この場合、例えばドストエフスキーのように徹底的に内面を描いて、狂人であろうとどう考えているのかを文面に表すのでなければ、一般人には行動の理解が不能。言い換えれば、そのためどんな現実離れしたことも出来てしまうという反則すれすれの展開も可能である。
確かにストーリーテラーとしての才能は非凡で、飽きもせずすらすら読み進められるが、本作の場合、キーになる写真とかの小物の内容が読者に明らかにされず、武志の内面が段々とわかってくるというだけで、ミステリーとしての面白さはほとんど感じられない。読者のわからないところで、勝手に証拠が揃えられていき、はい、結論という感じだ。
ミステリーってこんなもんだったっけかな?学生時代によく読んだアガサ・クリスティ作品や刑事コロンボの文庫本なんかはもっと良く出来ていた気がするんだけど。ということで、アガサ・クリスティの本も近いうちに読んでみる。