ソラリスの陽のもとに/スタニスワフ・レム 1961年 評価:4
二つの太陽の間で人類の科学では理解不可能な安定軌道を持つ惑星ソラリス。人類が100年近くも研究を続けてきた結果わかったのは、知能を持つ生命体である海の存在だった。そのソラリスからの連絡が途絶えたことから、心理学者でもあるケルビンがソラリスの宇宙ステーションに到着するが、そこではそれぞれの科学者が別個に行動し、一名は自殺していた。ソラリスでは、海によって、人間の精神に刻み込まれた強い印象をもとに“対象物”が創造される。ケルビンには、自らの冷たい対応により自殺に追い込んでしまった若いころの恋人ハリーが創造された。ケルビンは冷ややかな対応で対処するが、“対象物”であるはずのハリーは、自らの意思を持ち始め、自分の成り立ちの真実を知るようになる。
「2001年宇宙の旅」と並び賞される、SF映画の名作「惑星ソラリス」の原作である。レムは、宇宙では人類の科学では到底計り知れない文明が発達しているはずで、それを書きたかったといっている。特に映画の世界では、SFといえども、姿形は異なっても結局は人類の文化をベースとし、同じ土俵で戦いや和解を描いている。それが面白くないということではないが、「2001年」や「ソラリス」(「コンタクト」もこの類に入る)は文明からして異なった世界を描いており、そのような難しい題材を映画として成り立たせたことでも凄いことなのだと思う。私の考えもレムと同じものなので、理解まではいかなくても受け入れることは出来る。
本作は底知れぬ知能を持つ海の壮大な描写が素晴らしいし、ハリーやそれぞれの研究者の“対象物”との向き合い方といった極人間的なやり取りがスリリングだ。確かに人生を深く考えさせたり、何かの教訓を得るという類のものではないが、神秘的な宇宙を感じ、人間は大宇宙の中ではただただ、ちっぽけなものであるいうことを認識させてくれる。