ユービック/フィリップ・K・ディック 1969年 評価:4
私はもともとSF小説は好きで、かなりの数を読んでいるが、今から思えば実際はそれほど面白くなかったものも多かったのか、記憶に残っているものは少ない。本作は、ある映画雑誌の「この原作を映画化しろ!」という特集に載っていたもので、作家が「ブレードランナー」や「トータル・リコール」、「マイノリティ・リポート」など私の好きなSF映画の原作を書いている人なので、久しぶりにSF作品を手にとってみたものである。
1992年。世の中は超能力者(読心能力者、予知能力者等)とその能力を減衰させる能力を持つ不活性者と大多数の一般人に分かれていた。ある時、超能力者たちがいっせいにいなくなる事態がおき、これを超能力者を率いる組織のクーデターとみた不活性者を一般人に紹介する会社の第一人者が、有能な不活性者を集め、これを阻止しようと動き出す。
この高評価は、上述の映画の世界観がここでもあり、私のとってはすんなり受け入れやすい物語であることと、変な進行はあるのだが、それは残り30ページぐらいで判明する事実が総て解決するという、かなり驚きのラストが素晴らしいところにある。また総てのものが時間退行していく世界は、確かに今映像化したらかなり面白い作品が出来るだろうと思う。