三毛猫ホームズの運動会/赤川次郎 1983年 評価:1(短編集として)
血、女、高所恐怖症の刑事・片山とその妹、晴海(一般人)、晴美に惚れている刑事・石津と片山の飼い猫ホームズが出先で事件に会い、その事件のトリックを暴くという「三毛猫ホームズ」シリーズの短編5つを集めたもの。
現代の何を髣髴させるか、でぴったりのものがあった。アニメ「名探偵コナン」である。間抜けな警察(きっちり現場検証、関係者聴取すればわかるであろうことの見逃し)が前提の、いまいち刑事片山やその妹、猫の活躍(アニメで言うところのコナン)という構図がそっくり。その構図とともに、一般人でありながら平気で現場に出入りできてしまう晴美、全く刑事としての役目を果たさない石津、トリックをわかっているような猫という現実離れした設定が、正直白々しい。
短編含め4作品を読んだところで思ったのは、作者は、まずある一つのトリックが思いつき、それを成り立たせるためにサイドストーリーをくっつけていくのではないかということ。このため、肝心要のトリック(それが特に素晴らしいとも思わないが)はともかく、その周辺の話が余りに無理矢理すぎる。「推理」は既評の通りだし、「運動会」では被害者は、犯人に刺され、その傷を認識しハンカチで止血している状態なのになぜ普通に運動会の競技に出ているのか?「スクープ」はそのような状況でなぜ目撃者がいないのか?「バカンス」ではきちんと関係者聴取すれば簡単に解決するじゃん、とか、とにかく全くの不完全犯罪なので、読み解くといった面白みもない。
古き良き平和なバブル時代のライトノベルという表現がぴったりだろう。短編一つ一つで評価すると肩の力を抜いて読みきれはするので評価は2だが、同じような短編が5つもあると辛く、5つ全部読む必要があるのかを冷静に考えたら、読む気がなくなり、3つ読んで挫折。短編集としてみると評価は1になる。