スピカ 原発占拠/高嶋哲夫 2001年 評価:3
既評の「宣戦布告」と同じ原子力発電所が題材となっているが、「宣戦布告」はテロリストが原発には全く触れられず、あくまでテロリスト対自衛隊という対立を通して日本の軍隊の在りようを主題としていたのに対し、本作はテロリストがきちんと原発の中にまで入って原発を臨界まで持っていくので、設定を十分生かしているといえよう。
作者が元日本原子力研究所研究員だけあって、内部を知っている人にしか書けない原発描写があり(これが「宣戦布告」には全く欠けていた)、また、日本原子力発電という実在の会社を出し、どう考えても敦賀半島が舞台であることがわかり、現実的な設定である。まぁ、570万KW級という原子炉はあまりにも・・・という感じがするけど。
テロリストと自衛隊、技術者を絡ませ、臨界に達した原子炉を楯に世界に共産主義を復活させようという、原発を舞台にしたらこの展開しかないというオーソドックスな流れで、正直先が読めてしまう。誰に焦点を当てているのかというのが曖昧だし、テロリスト達の最終目的もいまいち収まりが悪く、平均点が良いところだろう。