スローターハウス5/カート・ヴォネガット 1969年 評価:2
74年のジョージ・ロイ・ヒルの映画版の評価が高いし、原作もよいとの評判があったことから読んでみたが、よく意味がわからないし、文章的な魅力もない。
物語は第二次世界大戦末期、ドイツに捕虜としてつかまり、ドレスデンで空前の空爆を受けつつも生き残った男ピルグリムを主人公に、その背景と時間的経過を軸に展開していくのだが、彼は自分の過去、未来と時空を勝手に浮遊する能力を持っている。戦後トランスフォーマ星人に拉致され、その星で何年か見世物としてとらわれていたときにトランスフォーマ人から教わった、「世界は4次元であり、その人物の生まれてから死ぬまでを一貫してみることができる。それはひとつの物体であり、変えることはできない」という世界観の中、精神がタイムトラベルできるからといって何かを変えることもせず、客観的に生き、つらいこと、悲しいことはできるだけ見ないように、楽しいことだけを見て、なるようにしかならないという概観で人生を見ている。いいといえばいい、それでいいのかといえばいいのか?という生き方である。なお、実際彼はタイムトラベルしていたかどうかはまったく定かではなく、頭を打った後にそのような夢を見ただけなのかもしれない展開になっている。
ともあれ、「人生はなるようにしかならない」というのが私の感じた主題であり、それを一種の割り切りと捕らえ、さらに思い切った行動に出られるようになればよいのだが、無気力な人間からすれば、より無気力になるだけであり、現在社会においては危うい主題である。これは前向きに捕らえられれば面白い概念だとは思う。しかし、文章的な魅力はないことため、評価は下げざるをえない。