燃えよ剣/司馬遼太郎 1965年 評価:4

 新撰組副長であった土方歳三の生涯を描いた傑作で、テレビドラマ化も再三されている。

 元々、男気を感じさせる時代小説はすきなのだが、戦国時代のものが多く、新撰組のことは、土方や近藤勇、沖田総司という名前は知っていても、それ以上はほとんど知らなかった。

 刀で戦うことが基本の江戸時代までは、武士の戦いというのは張り詰めた緊迫感があり、一流の武士はそれぞれが素晴らしい心根の持ち主(小説の上だけかも知らないが)で、自然読み物自体も無骨な、好きな人にはたまらないものになる。しかし本作でもそうだが、明治時代になり飛び道具が量的にも質的にも充実してくると、戦いの本当の主役は人自体ではなくなってくる。本作でも前半の新撰組の活躍は個々を主役とした戦いが、後半の旧幕府軍としての戦いは策略が、主として描かれる。そのような難しい時代を題材としているが、そこは司馬遼太郎、どちらも力強い筆致で読み応えのあるものに仕上げている。男気も十分描かれているしね。