タイム・マシン/H.G.ウェルズ 1896年 評価:4

 タイムマシンという概念を決定的に確立した、なんと100年以上も前の作品である。作者は2度映画化された「宇宙戦争」(これも1898年作!)も書いており、まさに「SFの父」と呼ぶべき人物である。

 ある変わり者の科学者は、友人達の前で理論を唱えた上で、自身が製作したタイムマシンを用い、未来への旅行に出発する。彼が到達した紀元80万年の世界は、エロイという単一の人種(身長約120センチで、ピンク色の肌と華奢な体躯、小さな耳と口、大きな目を持つ種族)が幸福に暮らす、平和で牧歌的な桃源郷の様相を呈していたが、実は、長い年月の中で進化を遂げ、平和の果てに無能で知性が欠けることになったエロイは、虐げられ、たくましく育った地底人の食肉用として生かされているだけであった。

 この衝撃的な内容、そして科学者がタイムマシンを進ませ、地球の滅亡の時期をその目で見る展開を、120ページ程度の短編として纏め上げており、とてもスピーディーかつ想像力が卓越しており、とても100年以上前の作品とは思えない素晴らしさだ。