「ファースト・フィナーレ/スティーヴィー・ワンダー」 74年 評価 4
70年代初期の名盤3部作の3作目となる。本作の前に交通事故に巻き込まれ、一時意識不明となった。その後、明らかに作風に変化が見られたといわれており、本作では歌詞の内容に特にその変化がみられると私は思う。
本作でも感心するのが1曲目。スティーヴィーはアルバムの一番目の曲にものすごく力を入れるアーティストなんだろうと思う。最初の曲で、前作との変化や新しい試み、溢れる才能と天才性をすべて聴き手に悟らせる。本作の「やさしく笑って」もスティーヴィーらしくもあり、完璧な曲でありながら力が抜けていて、あっという間に彼の世界にもっていかれてしまうのだ。
前述の交通事故の影響か、生きていることのすばらしさ、生命への賛美を感じさせる歌詞を持つ曲が多く、その内容も素晴らしく、ついにアーティストとしての完成形を本作でみることができる。様々な種類の楽曲がすべて一定以上の水準をキープしており、非常にトータル性も高い作品。
ただ、相変わらずメロディ的に突出している曲が少なめなので評価は4になるが、どれも彼の天才性を如何なく感じられる作品で、名盤であることは間違いない。スティーヴィーの作品群の中で私が好きなのは本作〜「ホッター・ザン・ジュライ」の3作となるようだ。
なお、「聖なる男」はジョージ・マイケルがカバーし、「リッスン・ウィザウト・プレジャダイス」に収められた厳かな名曲。あと、これは完全な余談だが「愛あるうちにさよならを」はキャンディーズのアルバム「年下の男の子」の最終曲「愛のとりこ」の完全な原曲である。にもかかわらず当曲の作曲者名は「穂口雄右」となっている。なんなんだこいつは。