「グレイテスト・ヒッツ/ロッド・スチュワート」 79年 評価4.5


 名作『アトランティック・クロッシング』以降、3作のスタジオアルバム制作後に発表されたコンピレイション・アルバムで、正式なものではない。

 このアルバムの前にディスコ・ブームを意識した「アイム・セクシー」の大ヒットがあり、また、80年代のアルバムを聴くと時代を意識した音作りで人気を保ってきたのかと思いがちだが、このベストアルバムを聴くと、その派手な印象とは違い、シンプルなロックにのせた押さえ気味のボーカルが彼の持ち味であることが改めてわかる。

 『アトランティック〜』でロッドのボーカルはあまり好きではないと書いたが、これだけ徹底してボーカルを、シンプルで且つ緻密なサウンドにのせて聴かされると、やはりボーカリストとしての力量を認めざるを得ない。特にNo.1ヒット「今夜きめよう」(77年年間チャート1位)や「アイム・セクシー」は派手な印象が先行するが、じっくり聴くとシンプルな音にのせた感情豊かなボーカルにさすがと唸るしかない。そして意外なことにこれ以外の曲は総てサウンドとしてだけ聴けば地味な印象すらする。

 しかし、このあとロッドは自分の本来のこのスタイルを見失い、時代にのせた音を採用することで突出したボーカリストとしての評価を失っていく。