「ヘヴィ・ノヴァ/ロバート・パーマー」 88年  評価3.5


 2003年9月に急死したロバート・パーマーの全盛期のソロアルバム。84年に「恋におぼれて」、そのあとパワー・ステーションというユニットを組むなどしてこの期間彼はのりにのっていた。ダンディにスーツを着こなし、およそミュージシャンらしくない風貌など、特異な存在であった彼だが、天才肌であったことは間違いない。

 本作の変幻自在さは凄まじい。タイトなビートで始まるヘヴィな「この愛にすべてを」「つのる想い」のA面1,2曲目から、レゲエ調の「チェンジ・ヒズ・ウェイズ」ではヨーデル(!)まで披露し、B面ではジャズ調の「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」からアフリカンビート、ソウルまで何でも詰まっているアルバムだ。そしてそれぞれの出来が水準以上であるので、個人的にかなり好きな1枚である。

 しかし、天才肌だった彼らしくアルバムは出来不出来の差が激しい。飄々とした、感情を表に出さない風貌からか、ただ単に趣味で音楽をやってるだけ(本当はどうだか知らんが)という印象があり、他にもベストや「リップ・タイド」(85年)も持っていたが消してしまった。

 「恋におぼれて」(「リップ・タイド」収録)や「この愛にすべてを」というビートの効いた曲や「アーリー・イン・ザ・モーニング」「シーメイクス・マイ・デイ」のような抑揚の少ないミドルテンポの曲が彼の持ち味で、非常にかっこいいし、渋い。