「ザ・ウォール/ピンク・フロイド」 79年 評価4


 『狂気』と並んで一般的に有名なピンク・フロイドの大ヒットアルバム。80年のビルボード年間チャート1位獲得。またピンク・フロイドにとって唯一のシングルNo.1ヒット、「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」が収録されている。

 2枚組み計80分という大作だが、その完成度の高さは素晴らしい。効果音とセリフを効果的に織り交ぜ、まるで1本の映画を見ているような感覚に陥る。特にロジャー・ウォーターズの独特のボーカルは時に狂言じみ、時に味わい深く本作のドラマ性を際立たせる。彼の脱退後、ピンク・フロイドにある種の毒、魔術がなくなったのは確かである。

 私は一時期ピンク・フロイドの芸術性に魅せられ、5枚以上のアルバムを持っていたが、元来はポップ・ロックが好きなため、結局完成度の高いアルバムだとしてもなかなか聴かないというのが本音で、今残っているのは本作と『狂気』だけである。特に本作はシングルNo.1ヒットもありとっつきやすい内容になっているのは確かで、私にとってはピンク・フロイドのベスト・アルバムである。