「バット・シリアスリー/フィル・コリンズ」 89年 評価3


 フィルのソロ4作目で前作から約5年をあけているが、その間にも85年「セパレート・ライヴズ」、86年〜87年にはジェネシスの『インビジブル・タッチ』、88年「恋はごきげん」、89年「トゥー・ハーツ」とNo.1ヒットが連続してあり、今作も90年の年間チャート2位とこれまた馬鹿売れしたアルバムである。音的には前作を踏襲、というかほとんど変わらず、若干声質がやさしくなると共にスローテンポの曲が多くなった。

 ところが、よく売れたアルバムであるのに、不思議なほどメロディが記憶に残らない。これはほとんど前作と同じテンポで作られていると共にメロディもちょっといじっただけというイメージが有り、またアルバム全体を通してメリハリが少ないということが要因であろう。前作でも指摘したが、今聴いてみるとやはり勢いで売れたという部分が多く、今後名盤として歴史に刻まれるようなアルバムではなく、ベスト盤を持っているので残念ながら消去対象となる。

 80年代後半にワーカホリックとまでいわれるほど働き詰め、メディア等への露出が多すぎた反動が出たのか、このあとフィル・コリンズは91年の『ウィ・キャント・ダンス』(消去済み)を最後にジェネシスを脱退。次のソロアルバム93年『ボース・サイズ』(消去済み)はさらに暗い内容となり、興行的にも失敗。爆発的にヒットを飛ばした頃には想像できないほど急に消えていった(96年に「ダンス・イントウ・ザ・ライト」という題名的にも復活を意識したアルバムを発表したが見事にこけた)。結局、確かに名曲を何曲か残したが、アルバム全体として質の高いものは残せなかったアーティストという評価に落ち着く。