「XSCAPE/マイケル・ジャクソン」 14年  評価4.5


 マイケルが残した、アルバムに収録されなかった数多い楽曲の中から8曲を選曲し、現代風にアレンジした作品集。私はデラックス版を購入したので、すべての曲の原曲と「Love Never Felt so good」の別バージョンが収録されている。

 同じような趣旨の作品集は2010年12月にも「MICHAEL」として発売されており、それが卓越したメロディと歌詞に重点を置き、最後のオリジナルアルバムである「インヴィンシブル」以降の作品を中心に選曲されたものとすれば、本作は、作成時期に関係なく、曲及びボーカルとしての完成度が優先されたと感じられる。結果として「MICHAEL」は、メロディの美しさとマイケルの優しさを存分に感じられはするが、ボーカルの弱さや過剰なボーカルアレンジ、曲としての完成度の低さが感じられるものもあった。一方、本作に収められた曲は、例えばこれまでのオリジナルアルバムのどれかの曲と置き換わっても全く違和感がない(リアレンジも含めて)ほどの完成度の高さを持つ曲ばかりである。

 リアレンジの賛否があるようだが、私は賛である。原曲のままの作品集では、もともとのコアなマイケルファンはそれで十分であろうが、そうでないものにはやはり物足りない。マイケルの良さ、偉大さはもっと広く認知されるべきで、その意味でもリアレンジの意味は大いにあると考える。そのリアレンジはマイケルと一緒に仕事をした者が十分な時間をかけて、マイケルが出すであろう要望を想像して行ったもので、ほぼどの曲も納得できる出来栄えで、本当に何度聴いても飽きることがない。

 しかし、「Love Never Felt so good」の美しいメロディと感情豊かなボーカル、表題曲や「ブルー・ギャングスタ」「スレイヴ・トゥ・ザ・リズム」のまさにマイケル!というグルーヴ感にはもう脳も体も痺れてしまう。まさに唯一無二、世界が誇ったキング・オブ・ポップを今、またここに感じることができる。

 個人的には、メロディと歌詞が素晴らしい「MICHAEL」のほうが好評価にはなるが、今、死から6年が経とうという時期に、このような完成度の高いマイケルの曲が聴けるというのは純粋にうれしいし、何度か聴けば耳に残る強さを持った曲作りはマイケルの右に出るものはないと改めて感じ入るものである。