「インヴィンシブル/マイケル・ジャクソン」 01年  評価3.5


 前作から6年ぶりの新作(間に新曲5曲+リミックス7曲というアルバムがあったが)。前作ではちょっと時代に取り残されたという音であったが、本作は時流に乗ったビートの曲も取り込みながら、いつものマイケル印のポップスが展開される。

 サービス精神旺盛なマイケルはいつも80分というCDに録音できる目一杯の収録時間にするため、本作も16曲という収録数だ。そのため、数曲は好きでない曲が入っているのと、いまいちメリハリに欠けるため、評価はこんなものになる。だが、1〜3曲目はキング・オブ・ポックの面目躍如といった今風なビートの楽曲をそろえ、そのあとも「ユー・ロック・マイ・ワールド」「バタフライズ」といった今までにない味付けのポップスと、従来の美しいメロディを前面に出したバラード、子供のコーラスを多用した曲が並び、時代に乗りつつ、マイケルだけの色合いも加味した良作である(2010年の未発表曲を集めた「MICHAEL」で明らかになったのは、この当時から、スローテンポの曲はこの世の中の小さな幸せを歌う暖かな雰囲気のものになっていったということである)。ただ残念なのが、ヴィデオ・クリップで、いつものずば抜けたダンスを見れなくなったことだ。

 さて話は変わるが、このあと2003年に、またもやマイケルは子供に対する性的虐待疑惑で訴えられる。この件は非常に大きなニュースとして取り上げられ、マイケルに関するいくつかの特集番組まで作られることになった。日本でもこの裁判の模様は逐次ワイドショーでも取りざたされ、その疑惑の真偽は別にしてマイケル=変質者という図式が成り立ってしまった。特に最近の日本人は周りがどうみているか、という本質ではないところを気にすることが多く(欧米もそうだが、逆に本質を見ている人も多い)、マイケルの地位は下落した。しかしこの裁判、マイケル側の完璧な勝訴に終わったことをどれほどの人間が知っているだろう。何の根拠もなく、ただ金を得るために嘘の証言を繰り返した原告は全く馬鹿にされる形で引き下がった。

 成功者を貶めることだけに興味を示し、それによって失われたマイケルという偉大な才能。これに加担した大多数の一般人の犯した罪は非常に大きい。

 マイケルらしい美しい曲「ロスト・チルドレン」で歌われる一節、”この歌をロスト・チルドレンに捧げよう。どうか彼らが無事でありますように、いつか家に帰れますように” こんな歌をおおっぴらに歌えたのはマイケルただ一人である。私は元々、ゲイであろうが、植毛してようが、整形してようが、音楽を聴く上では全く減点材料にはしない。私はマイケルの才能を、美しく純粋な心を、愛している。