「ヒストリー コンティニューズ/マイケル・ジャクソン」 95年  評価3.5


 前評ベスト盤『ヒストリー ビギンズ』は元々4曲の新曲を加えて発表する予定だったものだが、15曲収録の新作というような形で『コンティニューズ』が加えられ『ヒストリー』として2枚組となった。

 前作『DANGEROUS』から約3年半。この間にマイケルは性的虐待容疑で裁判にかけられる。本件は裁判が長期化することに嫌気がさしたマイケルが金を払うことで決着を見たのだが、この金を払ったことが結局はマイケルの行為を灰色化した。そのような状況のなかでつくられた本作は、音的には前作とほとんど変わっておらず、確かに前作が何年も時代を先取りしたものであるという評価が多いことを差し引いても、多少なり時代遅れという感が否めない。

 本作で特徴的なのは歌詞で、上述のような状況であったので、タブロイド誌や、芸能記者、悪意を持った一般人に対する攻撃の言葉が痛烈だ。また、マイケルとしては珍しくメロディが希薄で短調な曲が多く、なかには「スクリーム」や「ユー・アー・ノット・アローン」という名曲もあるが、良し悪しの差が激しく、全編を通して聴こうとは思えないアルバムである。

 しかし、「チャイルドフード」「スマイル」の歌詞の美しさには涙が出てきそうだ。「チャイルドフード」では「僕を判断する前に 受け入れようと努力して・・・」と自分になかった子供時代をあからさまに表現し、チャップリンが映画「独裁者」で書いた「スマイル」では「微笑もう たとえ心が痛んでも 微笑もう たとえ心が引き裂かれても」と自分を鼓舞し、そんな境遇になっても「人生はまだまだ生きる価値がある」と感動的に歌い上げるマイケル。世界一のスーパースターになっても人一倍理想が高く、そしてあまりにも純粋すぎるマイケルは、自分自身でいることを捨てられないからこそ傷つきやすい。それを真正直に歌ったこの2曲にマイケルの心の美しさを感じられずにいられない。