「ファンタスティック・マック/フリートウッド・マック」 75年 評価4.5


 それまで、通好みのブルース・バンドだったフリートウッド・マックが、スティーヴィー・ニックス(Vo)とリンジー・バッキンガム(Vo,G)を迎え、新たなスタートを切った最初のアルバムで、76年年間チャート2位、77年年間チャート10位というヒットを記録した長寿アルバム。

 二人の加入により、以前よりロック・ポップス色が強まるとともに、既メンバーのクリスティン・マクヴィーを含め極めて個性的なボーカリストを3人(ハスキーで女性っぽい声のクリスティ、だみ声で癖のあるスティーヴィー、高音で神経質そうな声のリンジー)抱えることにより多彩性がプラスされた。しかし、フリートウッド・マックの最大の持ち味は、地味だが的確なミック・フリードウッドのドラムとジョン・マクヴィーのベースが紡ぐ独特のリズムであり、これは後の「タンゴ・イン・ザ・ナイト」(87年)でも全く変わらない。フリードウッドのリズムに乗せ、バンドとして最小の楽器群(ギター、ベース、キーボード、パーカッション)を加えて計算し尽くされた演奏とメロディは決して派手さはないものの、極めて完成度が高く、全編聴き応えのある仕上がり。

 特にクリスティンの「セイ・ユー・ラヴ・ミー」「ウォーム・ウェイズ」「オーヴァー・マイ・ヘッド」の出来がよく、クリスティンは昔からのメンバーなので、どうして突然このバンドが売れたのか不思議だ。やはりスティーヴィーとリンジーの加入が大きかったということか。