「ザ・ユニオン/エルトン・ジョン」 10年 評価3
エルトン4年ぶりの新作はレオン・ラッセルとのコラボレーションとなった。全16曲中4曲がレオンの曲で、共作が2曲、残り10曲がエルトンの曲である。
エルトン63歳、レオン68歳。ミュージックシーンでこの年になって一線で活躍する人のアルバムは、ほとんどが昔の名曲のカバーか、自身の昔の曲を「アンプラグド」にしてアレンジしたものであり、総て新曲であるということは驚くべきことである。レオン・ラッセルは「スーパースター」「ソング・フォー・ユー」「マスカレード」という、日本ではカーペンターズのカバーが有名な曲の作者で、私もそれらの曲はとても好きなのだが、それ以外は聴いたことがない。しかし、70年代前半にヒットを連発したことからも確かな作曲能力を有していたものと思われる。また、キーボードプレーヤーとしての評価が高いらしい。
しかし、評価は3になってしまう。それは、レオンの曲がアメリカのルーツミュージックを基盤としていることから、どうしてもその良さが日本人にはわかりづらいこと、レオンは元々独特の歌いまわしをするのだが、それよりもウィリー・ネルソン化している声質が好きではないという、曲云々の前のどうしようもないこととともに、エルトンの曲も彼にとってのアイドルでもある人物とのコラボであることから、おとなしく納まってしまったことが要因に挙げられる。
逆に冴え渡るのがバーニー・トウピンの詩である。20年前にこの詩に感動したかというと疑問ではあるが、私自身40を超えた今となると、この含蓄に富んだ詩はしみじみと噛み締めたいものである。
評価は3ではあるが、逆に言えるのはレオンとのコラボによりエルトンの音楽に幅が出たこと。ソウルフルな女性コーラスを多用し、ジャズやブルースのセッションっぽい雰囲気のピアノとコーラスの掛け合いは音楽の醍醐味を感じさせてくれる。それに何曲かはバーニーの詩と相成って相変わらず素晴らしいメロディを書いており、まだまだエルトンの才能の泉は枯れていないことを感じさせる。
かつては細身で端正な顔つきだったレオンだが、一線を退き、インターネットで細々と自作の曲を売るという隠遁生活を送っていただけあり、エルトン以上に太ってしまった。彼の曲が、正確に言うと私としては期待はずれに終わったことがこの評価になったといえるだろう。