「ソングス・フロム・ザ・ウエスト・コースト/エルトン・ジョン」 01年 評価3
多作だったエルトンも年のせいかだいぶ寡作になり、前作から4年が経過。本作こそは、前々作までで試みていた原点回帰が徹底している。前々作までの原点回帰とはいってもやはりその時代の音を取り入れていたし、大幅な改造はしていなかった。ところが本作は徹底していて、12曲中半数の6曲がピアノソロから始まり、まさに初期のピアノマンの匂いがぷんぷんする。
しょっぱなの「エンペラーズ・ニュー・クローズ」でのまとわりつくようなボーカルと力強いピアノ、エンディングの「ディス・トレイン」の重ねられる音の厚みなど、重厚さは感じられるのだが、決定的に70年代と違うのはメロディの多彩さである。ほとんどの曲は、聴いた翌日に、曲名を見てもメロディが思い出せないし、思い出せたとしてもありふれたものであり、残念ながら私としては存在価値は見出せず、消し対象となってしまう。
原点回帰は必ずしも良いものではない。しかし、ヒット曲を放ち続けるという呪縛から解き放たれ(それまで30年続いていた全米トップ40入りの記録が00年に途切れた)、自分の本当に作りたい音楽を作るという姿勢は本作には感じられる。が、必ずしも本作では成功の域にまではいっていないといえよう。