「ビッグ・ピクチャー/エルトン・ジョン」 97年  評価4.5


 本作は、世界で一番売れたシングルであるダイアナ妃追悼の「キャンドル・イン・ザ・ウインド・1997」と同時期に発売されたため、話題になったアルバムである。本作発表時、エルトンはちょうど50歳であるが、とても年齢を感じさせないような若々しい作品となっている。

 本作は意外とエルトンファンの間で人気がないようだが、たぶんそれは前作で見せた原点回帰の流れがまったく逆方向に向いたからだろう。しかし聴いたあと、何日かしてもほとんどの曲のメロディが思い出せるほど曲としては佳曲が多い。80年代以降のアダルト・コンテンポラリー路線の中での集大成とも言えるほど、声のはり、年齢相応の曲の重さ、メロディの懲り方が伺える。

 「キャンドル〜1997」とカップリングされた「ユー・ルック・トゥナイト」はまさしくポップロックのバラードのお手本とも言うべき見事なメロディであるし、「リヴ・ライク・ホーセズ」は名曲「ワン」にも通じる壮大なバラード。ソウルフルな「リカヴァー・ユア・ソウル」、ポップな「ウィキッド・ドリームス」も良い。他のエルトンファンの評価がどうであれ、私は本作をエルトンの80年代以降の3本指に入る作品と思う。