「デュエット・ソングス/エルトン・ジョン」 93年 評価4.5
前作が今後の存在意義に疑問を感じざるを得なかったアルバムであったため、自作はどうなることかと思っていたが、1年振りのアルバムは、16曲中15曲がデュエットソングという異色盤。4曲だけがエルトン自身の作曲。もともとはエルトン自身の過去のデュエット曲に数曲新しく録音したものを入れる予定だったらしいが、やっていくうち、総てを新しく作ろうということになって出来たアルバム。
デュエットの相手は実に多彩である。リトル・リチャード、クリス・レア、グラディス・ナイト、レナード・コーエンといったソウル、ギタリスト、詩人の分野の大御所から、ドン・ヘンリー、ボニー・レイットといった、アメリカを代表するアーティスト、かたやキキ・ディー、ニック・カーショウ、ポール・ヤング、ジョージ・マイケルといったイギリスのアーティスト、そして45歳にしてなおK.D.ラング、P.M.ドーン、ル・ポールといった若手の起用といったエルトンの交友関係の広さ、柔軟性を示す選人となっている。
曲も映画音楽、フィラデルフィア・サウンド、ソウル、ジャズ、クラブ・ミュージック、ポップス・ロック、オールディーズとなんでもあり。どれも特徴的、または良い曲を選んでいるので悪いわけがない。とはいってもその多彩さが、好きな曲と嫌いな曲を分けてしまう点がマイナスではあるが、ともあれ、停滞気味であったアーティストとしての能力発揮が、本作のようなスパイス的な役割を持ったアルバムによりある期間、冷静に見つめなおすことが出来たのは、このあとのアルバムを考えるとプラスであったのだろう。
エルトンはやはりその作曲能力、パフォーマーとしての魅力に注目が行くが、本作ではボーカリストとしての魅力にも気付かせてくれる。元々上手いとか下手とかいうより、表現力が抜群ではあるが、どんな曲を歌ってもさまになってしまうことが、本作で証明される。