「スリーピング・ウィズ・ザ・パスト/エルトン・ジョン」 89年 評価3.5
シングルヒットはあったものの、歳に似合わぬ軽めのポップス・アルバムになってしまった前2作で第2停滞期となっていたエルトンであったが、本作でまた立ち直ったと言って良かろう。本作はソウル・ミュージックにインスパイアされて製作したこともあって、全体としてのソウルを意識した音、曲作りで、まとまりがあるとともに、前作から声の調子が良くなったことから、歳相応の落ち着きもある。
特にシングルカットされた「ヒーリング・ハンズ」はソウルフレーバーをもった力強さと印象的なメロディ・ラインで、ハイテンポの曲として80年代随一であるし、「サクリファイス」は独特のエルトン節が感動的な、これまた80年代を代表する名曲である。しかし、これ以外の曲に抜けたものはないため、そこそこの評価にはなってしまう。
ただし本作以降、適度な間隔を置いてアルバム製作を行うようになり、40歳を超えた重さを備え第三期黄金時代へ突入する。