「トゥ・ロウ・フォー・ゼロ/エルトン・ジョン」 83年 評価 4
エルトンの完全復活を印象付けた作品。プロデューサーは本作が3作目となるクリス・トーマス。前作のように過度にエルトンの声をいじることも、流行の音を取り入れることも控え、あくまでエルトンの紡ぐメロディラインの美しさを強調するつくりとなっている。
復活の最大要因は全編バーニー・トウピンとのコンビ作品に戻ったこと。天才エルトンは歌詞が作られたあとにメロディをつけるので、バーニーの卓越した表現力を極力損なわないようメロディをつける結果、一筋縄ではいかない独特のものになる。つまりエルトン節はバーニーとのコンビ復活により必然的に蘇生したわけで、ここ数年の低迷期を一気に抜け出すことになった。
本作からは「ブルースはお好き?」「アイム・スティル・スタンディング」「キッス・ザ・ブライド」といったシングルヒットも生まれ、そのほかにも「心はさむいクリスマス」「ワン・モア・アロー」と佳曲が多い。ただ、以前のような躍動感、度肝を抜くようなメロディはなく、いい意味で落ち着いてしまった感は否めなく、評価としては4となってしまう。
本作は私にとって、リアルタイムで聞いたエルトンの最初の作品。「ブルースはお好き?」がちょうどヒットしており、その独特のミディアムテンポのメロディ、歌詞の素晴らしさに触れ、以来エルトンにのめりこむきっかけの一因になった。