「コンプリート・トム・ベル・セッションズ/エルトン・ジョン」 89年 評価4.5
フィラデルフィア・サウンドの大御所トム・ベルとのセッションで生まれた6曲総てを収録したミニアルバム。77年に録音されたものだが、最初の発売は79年で、これは3曲のみ収録。その10年後に発売された完全盤である。
77年といえば『蒼い肖像』でエルトン−バーニーの黄金コンビに陰りが見えた後の最初の低迷期にあたる。いろいろこの先を模索するなかでのトム・ベルとのセッションだったのだろう。エルトンの作曲は2曲のみでその他はほぼトム・ベルが手がけているが、これが結果的に好結果を生むことにつながっている。
エルトンのアルバムのなかでは79年のディスコ・サウンド『ヴィクティム・オブ・ラヴ』と並ぶ異色作であるのだが、サウンドがやかましく、古さを感じる『ヴィクティム〜』と比べ、ソウルフルで、メロディの美しさを強調し洗練されたフィラデルフィア・サウンドと抑えた感じのエルトンのボーカルはとても心地よい。
「ママ・キャント・バイ・ユー・ラヴ」は79年にシングルカットされて全米9位。「アー・ユー・レディ・フォー・ラヴ」はなんと26年後の03年に全英1位と収録曲は充実しており、6曲という少ない曲数が幸いしていることはあるが、評価は高くなる。