「キャプテン・ファンタスティックとブラウン・ダート・カウボーイ/エルトン・ジョン」 75年 評価5


 『黄昏のレンガ道』でロック界の頂点を極めたエルトンが遊び心満載の傑作『カリブ』を経て発表した、全編エルトン(キャプテン・ファンタスティック)とバーニー・トウピン(ブラウン・ダート・カウボーイ)のこれまでの道のりを音楽アルバムとして纏め上げた、彼らの至極私的で且つ芸術的な名作。この主旨は収録曲以外にも徹底されており、付録のブックレットにはエルトンとバーニーのそれぞれの幼き日の写真から、出会い、「僕の歌は君の歌」の初稿など想い出が満載で、本作をレコードでも持っている私にとってはまさに宝物のような作品である。

 そのような内容であるため、派手さや曲調の変化は前2作と比べおとなしいが、この時期のエルトンとしては長い期間(1ヶ月)をかけて作り出した音はまさに少しも隙がなく、歌詞とメロディが見事にシンクロしている。エルトンをよく知るものにとって、歌詞がとても素晴らしく、特にラストの「幼き恋の日々」〜「ベールの中の遠い想い出」のメドレーは感動的だ。

 アルバムとしてのトータル性を重視したため、シングル・ヒットは「僕を救ったプリマドンナ」だけであるが、ビルボード誌で初登場第一位を記録した最初のアルバムである。今でこそほとんどのアルバムが初登場第一位なのだが、80年代までは本当のスーパースターでなくては成し遂げられない(エルトン2枚、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、ホイットニー、ブルース・スプリングスティーンのみ)記録だったのだ。