「エルトン・ジョン/エルトン・ジョン」 70年 評価4
デビュー以降、「ライオン・キング」等のサントラやライヴ盤を除いたほとんど全てのアルバムを保持しているエルトン・ジョンは、勿論私の最も愛するアーティストである。彼について書くとどこまでも長くなるので、各アルバム評論の中に分散しようと思う。今回は、エルトンを好きになったきっかけから。
1980年代初期以前に洋楽が好きになった人の大半がそうであると思うが、83年頃から洋楽に嵌り始めた私にとってもとっかかりは当然ビートルズ。当時で10数年前に解散したモンスターバンドの存在は決して大昔の話ではなかった。ビートルズに嵌ると、当然数年前に射殺されたジョン・レノンが気にかかり、ちょうどその頃ジョンのベスト盤がリリースされたこともあり、これを購入。ベスト盤であるがゆえ当然といえば当然だが、これが素晴らしく良かった。しばらくビートルズ、ジョンを聴きながら今売れている洋楽にも興味を持ち出したところ、ヒットしていたのがエルトンの「ブルースはお好き?」。良い曲だなぁと思っていたところ、ジョンとエルトンが競演したライヴ盤があることを知り、これを購入。実はこのアルバムの半分以上がエルトン単独のライヴであったのだが、ここで「僕の歌は君の歌(ユア・ソング)」「ダニエル」などの名曲と遭遇。おおっ、エルトンとは素晴らしいアーティストではないか!!!しかも、この詩の素晴らしさはなんだ!!?というのがきっかけである。
さて、2作目がこのアルバムである。アメリカでは実質的にはこれがデビューアルバムとなる。前作では個性的なバロック調の曲を書く英国青年という印象でしかなかった彼は、天才らしく1作ごとに大きく成長を遂げていく。今作は、3作目の傑作「エルトン・ジョン3」に通じる泥臭いロックが4曲、残りがあまりにも繊細で1曲1曲が壊れやすいガラス細工のような情景を伴った楽曲に色分けされており、アルバムとしては若干まとまりがない印象を受けるし、前者はまだまだ荒削りの感は拭えない。しかし、特筆されるべきは後者である。
最初のビッグヒットで、今でもエルトンの代表曲であり、古典的名曲である「僕の歌は君の歌(ユア・ソング)」については何も言うことはない。メロディは無論、歌詞の素晴らしさに触れていただきたい。さらに、それ以上にこのアルバムの中で鳥肌が立つほどの感動を覚えるのが「ハイアントンの思い出」と「驚きのお話」だ。私は今まで1000枚以上の様々なアルバムを聴いてきた。しかし、誰一人として、これらの曲のように歌詞とメロディが一体化し、その情景を想い描かせ、描かれる人物に感情移入できるような、一種の良質な短編映画のような曲を書いたものはいない。誰一人として、だ。これが、私が無二としてエルトンを愛する理由なのだと思う。