「ロング・ロード・アウト・オブ・エデン/イーグルス」 2007年 評価4.5


 1994年の新曲を4曲含んだライヴ盤「ヘル・フリーゼズ・オーヴァー」以来13年振りのアルバムで、新曲のみで構成されたスタジオアルバムとしては実に1979年の「ロング・ラン」以来28年ぶりの作品となる。

 2枚組のボリュームだが、DISC1の1曲目から美しいコーラスが、2曲目のドン・ヘンリーとグレン・フライのボーカルの掛け合いが、3曲目の癖のあるドン・ヘンリーのボーカルが、4曲目のグレン・フライの優しきバラードが、6曲目の名曲「言いだせなくて」を彷彿とさせるティモシ−・シュミットのハイ・ソフトトーンが、イーグルスファンの心を間違いなくわしづかみにする。後半はややだれ気味にはなるものの、これだよ、これがイーグルスだよ。楽曲の特異性が少なくても、グループとしてのボーカル、一つ一つの楽器の使い方、間違いなくこれまでのイーグルスがそこにはあるのだ。彼らはアウトテイクが少ないということらしいが、どんな単純そうに聞こえる曲でも飽きが来ない理由は、一つの曲を丁寧に丁寧に作り上げていく姿勢にあるのではないか。

 DISC2は一変して、アルバムとしてのトータル性を感じさせる。1曲目の硬質なロックから、哀愁漂うインストルメンタル、グレンの力強いロックへの流れには痺れる。また、ジョ・ウォルシュの「栄光の時」もいい曲だ。グレン得意のワルツ「追憶のダンス」から、最後の「夢のあとさき」の頃にはこのアルバムが終わってしまうことに対する不思議な寂しさまで感じさせる。

 音楽が、好きな曲に好きに飛べるCD化されるにつれ、世の中のアルバムはとにかく売れるような曲を数曲入れ、あとは適当にお茶を濁すような内容になりコンセプトがなくなってきた。しかし、本来音楽とはそういうものではない。アルバムが一つの作品であるべきで、単曲ではヒットする魅力が薄くてもアルバムにはなくてはならない曲というものがある。この時代にアルバムとしてここまで完成度の高い作品を聴けたことが正直うれしい。

 冷静に評価してしまうと、DISC1はイーグルスらしさ満載としても、楽曲的には従来通りというか、新しい感じはないし、DISC2は近年まれにみるトータル性を感じられるも、歴史に残る傑作「ホテル・カルフォルニア」を発表してしまっている彼らならではの特性からどうしても比較してしまうとそれよりは低くはなってしまう。

 2016年1月にリーダーのグレン・フライが死去。もう二度とイーグルスとしての新しい音を聴けなくなると考えると、深い寂寥感を感じずにはいられない。紆余曲折を経たのちにも変わらずにいたイーグルスは、相変わらずの高クオリティーを維持した楽曲群を最後まで世に送り出した。私はイーグルスを真面目に聞き始めたのは2011年からであったが、イーグルスを聴くことができて良かった。1980年代にグレン・フライ、ドン・ヘンリーのソロアルバムから入ったことも結果としてはそれぞれの持ち味を知ることになり良かったかとも、今になって思う。