「ホテル・カリフォルニア/イーグルス」 76年 評価5


 1983年から洋楽に嵌りだした私は、1982年に解散したイーグルスの音楽は知らず、ドン・ヘンリーとグレン・フライという元メンバーのソロアルバムを聴くことでなんとなくイーグルスの音楽を予想し、その二人のアルバムがとてもよいという分類には入らなかったため、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」「ホテル・カリフォルニア」「言いだせなくて」というヒット曲があることは知っていたし、それらがいい曲だとは思っていたが、どうも手が出なかった。

 2011年3月に再結成したイーグルスの日本公演があることから、ちょっとした話題になっている頃、NHKのイーグルスの特集番組を偶然見て、彼らがビートルズを崇拝しており、そのため、曲はドン・ヘンリーとグレン・フライの連名としていたこと、コーラスがしっかり出来ることがメンバーになる条件としていたことを知り、これまで想像していた(特に「ホテル・カリフォルニア」の印象が大部分を占めていた)イーグルスの音が、実はちょっと違うんじゃないかと思った。そして、本作はロックの名盤と絶賛されていることから、購入してみた次第である。

 やはり思い込んでいたのとはだいぶ違う、確かに名盤である。もちろん彼らはロックに分類されるのだが、彼らにしか出せない色が、そこには毅然としてあるように思われる。コーラスの多用、それぞれ持ち味の異なる4人のボーカリスト、ストリングスアレンジも大胆に取り入れる収録曲の多様性、なにより、ギターなどの楽器音が”歌う”ように曲にのっていることが最も特徴的なのではないか。そして、ロックには歌詞の社会性というものが欠かせないのだが、本作ではベトナム戦争が終わった76年の不安定さを鋭く切り取っていることも名盤と語り継がれる由縁であろう。

 旧A面の5曲は、癖はあるが完璧な楽曲「ホテル・カリフォルニア」、これと同じくNo.1ヒットとなった爽やかな西海岸サウンドという印象の「ニュー・キッズ・イン・タウン」、めちゃめちゃカッコいいスピード感あふれるロック「駆け足の人生」、壮大なストリングスアレンジのバラード「時は流れて」と映画のサントラ盤を感じさせるそのリプライズと、完璧な出来である。旧B面は多少メロディ的に短調な感じはするものの、トータル的には文句のない評価5となる。なお、本作はロックファンにとっては、音の構成という専門的な部分で、より高く評価されるのではないか。とにかくトータル性のある完成度の極めて高い名盤であることは疑いようがない。