「アラジン・セイン/デヴィッド・ボウイ」 73年 評価3


 評論家の受け(しかも製作からかなり年数がたってからの)と比べてセールスがあまりよくないというアーティストの最も典型的な一人がデヴィッド・ボウイである。それは本作でだいぶわかってくる。

 前作「ジギー・スターダスト」の系列に並ぶ作品なのだが、内容的にはローリング・ストーンズ(実際にカバーを1曲収録)のようなブルースを基調としたロックが多い内容である一方、のちの「ザ・ウォール/ピンク・フロイド」に通じるようなプログレッシブ・ロック的な曲や、クラッシュに通じるようなパンクロックもすでにやっているし、フレンチ・ポップス的な雰囲気のある曲、ピアノを大胆にフューチャーした表題曲など、様々なエッセンスを取り入れ、今振り返ると時代の先端というかそれを超越した音楽を作っていることがわかる。しかも彼は踏み込んだ分野を完成させる前にどんどん音楽性を変えていったので、当時の評論家にも、セールス的にもあまり受け入れられなかったのだと思う。

 さて、本作は決して出来が悪いわけではないのだが、今、振り返って聞くと、新しいという感じはやはり受けないし、彼自身は稀代のメロディメーカーではないので、どうしても私の評価では高い点にはならない。天才性は間違いなく感じるのだが。