「ハンキー・ドリー/デヴィッド・ボウイ」 71年 評価4.5


 名作「ジギー・スターダスト」と同時進行で製作されたアルバムで、確かにアナログ盤のA面(1〜6)の曲は(「Life On Mars?」という曲があるくらい)、「ジギー〜」の中に収められていても全く違和感がない楽曲で、それぞれの完成度は高い。B面はアンディ・ウォーホールやボブ・ディランを題材にした曲があるし、あまりアルバムコンセプトを考えずに好きな曲をそのまま収録した感じで、そう意味でA面とB面で統一感のないアルバムなのだが、例えばビートルズが「サージェント・ペパーズ〜」の前に「リボルバー」を製作した時と同じく、ファンは、この後何かが起こるというような世紀の名盤発表前夜の興奮に歓喜したであろうことは容易に想像でき、彼の溢れ出る才能を感じられる。

 元来ボウイの曲はメロディがひねくれていて一筋縄ではいかず、また自身のボーカル自体が不安定で、それが独特な耽美さ、繊細さ、妖艶さを感じさせるのだが、本作ではピアノ(イエスのリック・ウェイクマン)とオーケストラアレンジが前面にフューチャーされ、これらの特徴をさらに際立たせている。単曲としては「ジギー〜」より美しい曲の数が多く、これはこれで名作だと思う。