「シカゴ] カリブの旋風 / シカゴ」 76年 評価3.5


 ベストの後のシカゴ10作目。スタジオ録音アルバムとしては8枚目。グループ初のシングルNo.1「愛ある別れ」が収録されている。全体的に円やかな出来だが、逆にシカゴらしさは失われ、「愛ある別れ」は名曲だが、それ以外に特別取り上げる曲はなく消去しないぎりぎりのレベル。

 シカゴは5作目から9作目まで連続No.1というその時代としては驚異的なチャートアクションを見せたが、11作目以降ものすごい勢いで凋落していき、グループとして完全な方向転換をして久々のヒットとなった「素直になれなくて」(82年)まで復活することはなかった。私は3作目から8作目まで聴いていないため正確なことはいえないが、1,2作目、9作目のベスト盤、そしてこの10作目を聴いた感じ、5連続No.1をもたらした購買層は、初期は社会派で硬派なロックバンド好みの比率が高かったのが、徐々に一般的なロックファンの比率が増えていったのではないかと思う。その均等が取れていた時期が5作分あった。そして凋落のきっかけとなったこの10作目では、ブラスを使わない「愛ある別れ」は成功し、A面はなかなかの出来ではあるが、B面では明らかに作曲能力の限界を見せており、ブラスの多用、社会性を無くしてはシカゴの存在価値はなく、他のグループの中に埋没してしまったのではないか。