「つづれおり/キャロル・キング」 71年 評価5
世界で2200万枚を売り上げ、6年もチャートインし続け、71,72年と年間アルバムチャートの2位、73年が22位となった名盤中の名盤。チャートアクションは派手だが、内容的にはポップス/フォークといった感じの実に地味な作品である。
声はだみ声系で決して歌が上手いともいえないし、12曲全編、ピアノとギターとドラムに必要最小限の楽器という本作がここまで売れたのは、一にも二にもメロディーの美しさである。この曲数、代わり映えのない曲風となればどうしても弛みがちになるものだが、それを微塵も感じさせない。「去りゆく恋人」「君の友だち」「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」「ナチュラル・ウーマン」という名曲のほかにも心に残る佳曲ばかりが収められ、完璧なる出来である。
キャロル・キングは当時28歳で本作が2作目と遅咲き(といってももっと早くから作曲家として活躍。われわれ世代ではカイリー・ミノーグ盤が有名な「ロコモーション」も彼女の作品)になるのだが、その声や曲調の枯れ具合が、私自身年を重ねるごとに心に染み入るようだ。本作はエルトンの『エルトン・ジョン3』と並び、ウイスキー・グラスでも片手にじっくりと聴き沁みていたい名作である。