「ワーキング・オン・ア・ドリーム/ブルース・スプリングスティーン」 09年 評価4.5
前作「マジック」から1年3ヶ月で届けられた、前作からのポップ・ロック路線を継承した作品。前作以降もポップ・ロック路線の曲を書き続けることを止められなかったとボス自らが言っている。
正直、聴き始めは、同じような、どこかで聴いたようなメロディだなと思って、評価は高くなかった。しかし、前作よりもわかりやすい歌詞はとてもストレートで、小難しいところはなく、その歌詞と一体となるとだんだんと良くなってくる。ラブソングである「ディス・ライフ」「キングダム・オブ・デイズ」は、単純に恋におちる若い世代だけでなく、あらゆる年代が共感できる内容で、還暦間近のボスならではであるし、それでいて「クイーン・オブ・ザ・スーパーマーケット」のような純な恋心を歌ったり、一方、2008年に亡くなった、Eストリート・バンドのオルガン、アコーディオン奏者に捧げたと思われる「ザ・ラスト・カーニバル」(アルバム自体をこの奏者に捧げている)では、年齢から迫りくる、避けられぬ別れの時を切々と、ある意味悟りの境地のようなボーカルで歌い上げる。このアルバムを聴いていると、ほとばしり出る明快でストレートな歌詞もロックンロールの醍醐味であったはずということを再認識させられる。
しかし、59歳だよ。59歳にしてみんなを勇気づけるロックを書くボスはやはり現代最高のロックンローラーなのだろう。正直、今の路線を進むのであれば、今時点で私の一番好きなアーティストといっても過言ではない。