「ザ・グレイテスト・ソングス・オブ・ザ・セヴンティーズ/バリー・マニロウ」 07年 評価4.5


 2005年に発売された50年代のヒット曲のカバー集『fifties』の大ヒットを受け、2006年に『sixties』、そして2007年に『seventies』がリリースされた。
バリー・マニロウの新作を聴いてみたのは約20年ぶりになるだろうか。もともと買うつもりはなかったのだが、選曲が名曲中の名曲ばかりであるとともに、自身のヒット曲のリアレンジ曲が7曲入っているのにも惹かれた。

 なにしろ、カバー曲12曲は、『明日にかける橋』『追憶』『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』『君のともだち』といった人類を代表する名曲だけでなく、『傷心の日々』『カリフォルニアの青い空』『イフ』『悲しみのバラード』『セイリング(クリストファー・クロス)』といった名曲の数々なのである。聞いたことのない曲は一曲もなく、原曲を持ってないのは2曲だけという選曲である。バリーはアメリカでは着実にエンタテイナーとしての地位を築いており、深みのある、丁寧な発声はビング・クロスビーやカレン・カーペンターを彷彿とさせ、気持ちよくないわけがない。

 カバー集となるとよく、隠れた名曲が選曲されることが多い。また、原曲を“自分なりの解釈”とか“新たなアレンジ”としてかなりいじくってしまうことが多いのだが、もともと原曲を知っている人間にとっては原曲以上になるわけはなく、その点、このアルバムは愚直に原曲に忠実であり、原曲のイメージをまったく損なうことなく、聞いていて気持ちいいと感じさせてしまう内容となっている。カバー集というのは最近の流行であり、上記の理由から買う必要はないと思っていたが、その考えを覆すような別次元からのアプローチにより存在価値をアピールしているアルバムである。

 有名な曲ばかりなので、それぞれの曲の解説は省くが、新たな発見としては、明るくおおらかな雰囲気の『カリフォルニアの青い空』の歌詞が何気にさびしい内容であったことと、山下達郎の『コージー』(95年)での「スタンド・イン・ザ・ライト」でデュエットし、艶のある声を聞かせていたメリサ・マンチェスターが、『君のともだち』でデュエットしているのだが、すっかりおばあちゃんの声になっていることである。

 さて、評価は難しい。単曲を積み上げれば、明らかに5になるのだが、もともとベストアルバムの最高点は4.5と決めているので4.5。ただ、良い曲を聴きたいのであれば間違いなく最高の位置にあるアルバムである。