「愛は、あなただけ / バリー・マニロウ」 81年 評価4.5


 名作「愛と微笑の世界」(78年)以降、作品的にも人気的にも衰退をたどっていたバリーの8作目のスタジオ・アルバム。売り上げ的には前作と同じぐらいだが、内容的には隠れた傑作と評してよいものとなっている。

 その要因はバリー本人のみによる初めてのプロデュースであろう。元々プロデューサーとしての実績もあったし、自分のやりたい音で作り上げたことが、当時の売り上げがどうであれ作品的にとてもロマンティックで、統一性のある仕上がりになった。今から思うとすべてを自身で作曲した84年の「パラダイス・カフェ」に通じる大人の世界を感じることが出来る。特にB面はすべてスローテンポの曲でありながら変化に富み、といって時代に即したポップスの側面も残し、かなり上質な出来となっている。

 単曲でも「ふたりのオールド・ソング」「きっと、どこかで」といった従来のバリー節に加え、初のヒット「恋はマジック」を髣髴とさせるクラシカルな「愛は、あなただけ」、ロマンチックな歌詞も印象的な「レッツ・テイク・オールナイト」など好きな曲が多く、またバリーのアルバムの中で最も甘い歌詞が多いのも特徴で、それも私のお気に入りの要因かもしれない。