「歌の贈り物/バリー・マニロウ」 75年 評価4.5


 70年代中頃から80年代初頭にかけて、アダルトコンテンポラリー部門の最大のヒットメーカーがバリー・マニロウ。彼がついに自分の進むべき道を発見したのがこの3作目である。

 実は彼のシングルヒット曲のほとんどは他人の曲である。それなのになぜ10年近くも一線で活躍できたかというと、それ以外にアルバムに収められている彼自身の曲も地味ながら完成度が高く、シングルとなった、後半盛り上がり系の派手な曲とのバランスが絶妙だったためと考えられる。そのバランスが取れ始めたのがこの作品からで、11曲中6曲をバリー自身が書いている。彼自身の手によるアップテンポの「ニューヨーク・シティ・リズム」「あの娘はスター」、その他にバラード系でも良い曲を書いており、非常に完成度の高い作品で、バリーの作品の中でこれをベストに挙げる人も多いだろう。

 シングルヒットした「フィーリング」「歌の贈り物」はやはりいつの時代でも名曲で、特に「歌の贈り物」は実はオリジナルはビーチ・ボーイズのブルース・ジョンストンの作品なのであるが、多くのエンターティナーに取り上げられる有名曲である。

 私が初めて行ったコンサートは85年のバリー・マニロウ武道館公演である。バリーがちっちゃくしか見えなかった2階席だった。今やそのときの様子はほとんど覚えていないが、私を洋楽にのめりこませた人物の一人が彼であったことは疑いようがない。