「ライトスタッフ」 83年米  評価4(5点満点) メジャー度2

監督:フィリップ・カウフマン
出演:サム・シェパード、スコット・グレン、エド・ハリス、デニス・クェイド他

 1940年代後半、ソ連とアメリカで宇宙開発のしのぎをけずっていた頃。ソ連に常に先を越されていたアメリカは、空軍等から優秀なパイロットを募り、宇宙飛行士としての訓練を受けさせていた。その中で選ばれて宇宙に飛び立つことになった7人が、マーキュリー計画(アメリカの一番初めの宇宙計画)の中でどうかかわってきたかの実話を元にした物語。

 7人のうち、3人は空軍基地からの応募者であった。その空軍基地では伝説的なテストパイロット(メーカーの最新戦闘機に試乗するパイロット。当時はどこまで速く、高く飛べるかを競っており、テスト飛行の25%は失敗。パイロットは死亡という時代だった)がいたが、彼は「宇宙飛行士はカプセルに入っているだけのモルモット」という考えをもっており、宇宙飛行士には見向きもしなかった。その彼が、宇宙開発が国家計画となり、宇宙飛行士が英雄と持て囃されるのを見、戦闘機の開発がもはや世間の関心事ではなくなっていることに嫉妬と寂しさを感じていく物語も並行して進み、単なる宇宙飛行士の英雄物語とはなっていない。全体がクールな視点で描かれており、アポロ13のように過剰な演出はなく、アルマゲドンのように馬鹿馬鹿しいアクションもない。宇宙飛行士でさえ、ある意味モルモットであるのは間違いないという当時の事実を正面から受け止めるとともに、3時間を越える長編であるため数多い登場人物の描き方も丁寧であり、アクションとドラマの配分も絶妙で品格のある硬質な映画に仕上がっている。

 また、高速戦闘機のスピード感(→トップガン)や宇宙飛行士の物語(→アポロ13)など、後に大きな影響を及ぼしていることは間違いない。出演者も細部に渡り後の主役級が勢ぞろいしており、あらゆる面でその後の映画界を先取りしている。