「トラフィック」 01年米  評価3.5(5点満点) メジャー度4

監督:スティーヴン・ソダバーグ
出演:マイケル・ダグラス、キャサリン・ゼダ・ジョーンズ、ベニチオ・デル・トロ他

 麻薬撲滅のために精力的な活動を続ける政府役人。アメリカとメキシコの国境付近で麻薬の密売を阻止している情報通のメキシコ人警官。夫が麻薬密売人の大物とは知らずに優雅に暮らしてきた妻。この3人の物語を並行して描くことで現在のアメリカの麻薬依存体質を浮き彫りにする問題作。

 役人は自分の娘が麻薬中毒になり、結局政府の仕事より家庭の絆を選ぶ。密売人の妻は夫を救うため殺し屋を雇い、更に自ら麻薬を売るようになる。メキシコ人警官は重要な情報をアメリカに売ることと引き換えに近くの公園にライトをつけてもらうがどこか幸せそうでない。ラスト、公園の野球場の夜間照明の元、少年チームの試合を見つめるメキシコ人警官のシーンで終わるが、彼は結局何も変わらないことを知っている。今ある組織をつぶしても需要と供給が成り立てばどのような環境の中でも変わりようがないのだ。結局この映画の主人公は麻薬であって3つの話の主人公ではない。

 ドキュメンタリーのように揺らぐカメラワーク。3つの物語を混乱なく纏め上げる手腕等、さすがはアメリカの若き才ソダバーグだが、救われない内容なので高評価にはならない。