「ギャング・オブ・ニューヨーク」 02年米  評価4.5(5点満点) メジャー度5

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ダニエル・デイ=ルイス、キャメロン・ディアス他

 1800年代中ごろのニューヨーク。次々と上陸する貧困のアイルランド移民と、それより前にいた住民(ネイティヴ)との間では日夜争いが絶えなかった。その日もアイルランド系とネイティヴのグループ抗争が勃発し、アイルランド系のリーダーであった神父が殺された。神父の子アムステルダムは何とかその場を抜け出し、その16年後、青年になったアムステルダムは父を殺したネイティヴのリーダー、ビルへの復讐を胸にニューヨークに乗り込む。

 2時間40分という大作。その長さに耐える中身の濃さである。ビルの愛人ジョニーとアムステルダムの恋、ビルの右腕として信頼を勝ち取っていくアムステルダム、ある時ビルの本性を知り復讐心が揺らぐアムステルダムなど、見所十分。スコセッシが長年温めていた企画だけあって、名匠の、大作にふさわしい実に堂々とした傑作である。91年の「ケープ・フィアー」以降いまいちな作品が続き、もうお終いかと思っていたが、撤回しよう。

 俳優陣も魅力的。私はどうもそのミーハ-的な人気や、優男っぽい風貌などが原因でレオが好きになれないのだが、俳優としては素晴らしい才能をもっていると認めざるを得ない。今回も繊細な青年の心情を見事に表現している。そしてダニエル!靴職人になるための修行をしていて5年ぶりの映画復帰となったが、なんと素晴らしいことか。狂気でありながら繊細。深い愛を持つ男ビルを完璧に演じ、悪役でありながら人を惹きつけてやまない。元々端整な顔立ちからアイドル視されていた時期もあったが、自身は極度にそれを嫌い役者としての魅力を常に発散してきて、私のとても好きな俳優なのだが、ブランクを微塵も感じさせない演技は素晴らしい。彼の存在がこの映画の質を更に高めたといっても良いだろう。

 しかし、結局この映画の主人公はニューヨーク。アムステルダムとジョニーの恋は成就しないし、アムステルダムの復讐もなんだか中途半端に終わり、結末らしい結末はない。このような歴史を繰り返して今のニューヨークがあるということをスコセッシは言いたいのだろう。その目的を果たすに十分な傑作に仕上がった。天晴れ、スコセッシ!