「マイノリティ・リポート」 02年米  評価4.5(5点満点) メジャー度4

監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ、マックス・フォン・シドー、サマンサ・モートン他

 2054年、ワイントンD.C.では3人のプリコグと呼ばれる予知能力者のおかげで殺人事件が全く起きなくなっていた。プリコグが見た予知夢を映像化して取り出し、それを解析して犯罪予防局が事前に殺人実施予定者を逮捕するためだ。このシステムを導入して6年が経過し、今後は全米中にこのシステムを導入しようかという時勢になっていた。犯罪予防局のジョンは6年前に子供を誘拐されて以降、犯罪を防ぐ目的でこの局で働いてきていまやチーフの座にある。しかし、ある日プリコグからのイメージの中で自分自身が殺人者となっていることを知り、彼の逃亡が始まる。果たしてその映像は誰かの陰謀なのか、それとも事実なのか…

 映画を見るかどうかを判断する上で、私の中で大きなウエイトを占めるのは監督である。「第一に映画は面白くなくてはいけない」が心情の私にとって、スピルバーグは期待をほとんど裏切らない監督で、今回もまさに2時間半が短く感じられるほどの面白さ。原作が「ブレードランナー」と同じ作家のものであり、もともとの脚本がよいというのもあるが、アクションも笑いも、スピルバーグ映画にはなくてはならない人間愛も絶妙に織り交ぜ、毎度のことながら第一級のエンターテイメント映画になっている。彼の映画の中ではトム・クルーズでさえも映画の一部に組み込まれ、彼の個性を煙たがる人でも違和感なく見られる映画である。

 ジョンが見た自分自身が殺人者になる映像の解明以降にもストーリーは続き、最後の最後までぐいぐい引き込まれるストーリー展開であるとともに近未来のテクノロジーを見せつける映像も圧巻である。

 終盤はプリコグの一人を連れての逃亡となるが、プリコグに対しては多くを語らず、逆に多くを語らないからこそ、人間としてではなくシステムの一部としてしか扱われないプリコグの悲しさをいつのまにか表現している。これらにストーリーテラーとしての才能が随所にちりばめられ、さすがスピルバーグという感じである。

 ほとんどけちのつけようのない作品なのだが、ただ一点。ジョンが殺人を犯す映像は大きくいうと仕組まれたものなのだが、殺人現場であるホテルの一室にその罠をかけることはできても、プリコグに偽の映像を見させることは不可能なわけで、そこまでの過程はどのように仕組めたのかが不明。その点だけが府に落ちず、満点にはならなかった。