「マトリックス」 99年米  評価4.5(5点満点) メジャー度5

監督:アンディ&ラリー・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー・アン・モス他

 1999年の現代。実は2199年頃であり、1999年の世界は人工頭脳が作り出した仮想現実であった。人間は自ら作り出した人工頭脳の支配下にあり、人工頭脳は、人間一人一人を培養させ、その生きるエネルギーを自分のエネルギー源としている。そのような仮想現実の中で、どうしても今の世界を受け入れられないハッカー、ネオは全く別の世界の存在に気づく。そしてネオは現実で人工頭脳と戦う集団から救世主として迎えられ、人工頭脳との戦いをはじめる。

 なんと言っても着眼点が奇抜。ワイヤーアクションなどは映像技術が発達すれば陳腐になってしまうものだが、この映画の最大の魅力はこのストーリーの大筋にある。この土台があるからこそ、銃弾がスローモーションに飛ぶのも、アクロバティックな動きをできるのも、ネオが生き返るのも真実であると捉えられる。

 あれだけ銃弾を浴びせ掛けられながら一発も当たらないことや、そんなにエージェントが次々と違う人間に移り変わったら別の世界の存在に気づく人間が増えるだろうという細かい矛盾はあるが、まぁ、許せる範囲である。また、戦いが始まった後の展開にはいつものハリウッド映画的な展開が多いのは否めないが(裏切り者の存在、紅一点の女優とのロマンス等)、それでも全体的には冷徹な視点で描かれている点、銃撃戦の最中に流れるBGMなど粋な演出で一貫されておりそれが新鮮な印象を与えている。ラスト近く、ネオが仮想現実の世界のものを電子信号で見切るシーンは爽快である。久しぶりに全編通して楽しめる娯楽映画を見たという感じだ。

 さて、来年(2003年)の夏に第2作が封切られるようだ。ネオは救世主となり、更に仲間を増やしていき、結果的には人工頭脳のボスとでも言うべき存在と戦うことになるのだろう。願わくばハリウッドの大作のような大味な映画になってもらいたくない。そうなってしまうのなら、大ヒットはするだろうが世の常として記憶に残るのは1作目のみとなる。第1作の結果から、そうすぐに人工頭脳の世界をつぶせるわけはなく、「スター・ウォーズ」のような9部作にするなどし、エイリアンシリーズのように監督の選択を成功させつづければ、各シリーズとも評価に値するSW、エイリアンのような稀有なシリーズとなるだろう。