「野火」 59年日 評価3.5(5点満点) メジャー度1
監督:市川崑
出演:船越英二、ミッキー・カーチス他
第二次世界大戦末期のフィリピン戦線。島に残された日本兵はもちろん日本軍に見放され、米軍にも相手にされないまま、飢えと病気と闘っていた。そんな中、田村一等兵は病気と判断され、病院に赴くが、歩けるような状態のものは入院させられないと突き帰され、戦場をうろうろするうちに、米軍の爆撃により日本兵は次々に死んでいく。残されたわずかな日本兵はただただ空腹と戦うのみ。ついには仲間の日本兵を”猿”と称して撃ち殺し食べるようになっていく。田村は気が狂いそうになる現状の中、普通の生活を望み、手を挙げてフィリピンの田舎の農民たちのもとに歩いていくが…
今となってはどこの若者がこの時代のことをまじめに考えるのだろうか、という内容の映画だが、確かにこの時代はあったのだ。国のためといって、戦う相手もなく、降伏しようとしても撃ち殺され(実際は恐怖におびえた地元の女性兵に誤って撃ち殺されるのだが、遠くで見ていた日本兵にはただ撃ち殺されたとしか見えない)、どうしようもなく、自分の糞さえ、人間さえ食べて生きるという絶望的な生き様が、冷めた田村の目から写実的に描かれた戦争映画の傑作。確かに古ぼけた題材であるし、今の日本映画では決して取り上げられない内容である(アメリカでは1998年頃から第二次世界大戦映画ブームが起きているが…)。しかし、今の飽食の時代に、気合いを込めてみてもらいたい映画ではある。