「キャスト・アウェイ」 00年米  評価3.5(5点満点) メジャー度3

監督:ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、ヘレン・ハント他

 チャーリーは大手宅配業者のFEDEXのコンサルタントで,日々時間に追われながら世界中の支店の社員への教育を行っている。クリスマスパーティー中に急な出張が入り、恋人と別れ、飛行機で南米に向かう。しかし大荒れの南太平洋上で航空機が墜落。チャーリーは一人生き残り、無人島に漂着する。

 この墜落までの展開及びこの後の1時間以上続くチャーリーの4年間に及ぶ無人島での生活場面は時間経過的に全く正反対の場面になるのだが,さすがはゼメキス監督で飽きさせることがない。無人島での生活は特にびっくりさせる演出もなく(猛獣や土人が出てくるとか),とてもリアルである。

 彼はついに島から脱出し,800キロを漂流した後,救い出されるのだが,この映画は冒険映画ではなく,救い出された後の彼の生き方に重点がおかれている。何もかも無の島から,物質に満たされた都会へ。時間の束縛がない世界から時間に縛られる仕事へ。ここで彼は自分が世界からキャスト・アウェイされた事実と、4年前の自分から何をキャスト・アウェイして生きていくのかに視点が置かれる。

 しかし,そんな視点は新鮮だが,実際の内容は新鮮ではない。元恋人は結婚し,子供がいる。映画の終わらせ方もメンフィスの農場の女性芸術家(ヘレン・ハントの一人2役だと思うが)との暮らしに希望を見出すチャーリーの笑顔であり、そこがハリウッド映画的でもあるしゼメキス監督らしくもある。生還までの物語は秀逸だが,なんとなくしまりがない印象を受けるのはそのハリウッド的な汎用な終わらせ方にあるのだろう。どうせならイタリアのタビアーニ兄弟の「グッドモーニング・バビロン!」のような「そこまでいくか!」的なラストにしたら、より強いインパクトになったのに。