「鉄道員」 99年日 評価4(5点満点) メジャー度4
監督:降旗康男
出演:高倉健、小林稔侍、大竹しのぶ、田中好子他
北海道、幌舞駅の駅長、佐藤乙松(高倉)は娘を生まれてまもなくなくし、2年前には妻(大竹)もなくして今は一人身の生活だ。幌舞は昔は炭鉱の町として栄えたが、今は住民200人の町となり、列車の廃線がきまっている。根っからの鉄道員である乙松を思って、昔からの親友が定年後の職を世話しようとするが、乙松はそれを断る。そんな時、乙松の前に不思議な少女が現れる。
高倉、大竹の夫婦と親友の小林、田中の夫婦と、達者な役者を配し、感傷深い映画に仕上がっている。特に高倉は鉄道に対しては頑固者でありながら、普段は普通のおやじを重厚にならないように演じており、さすがに名前だけで老若男女を問わず客を呼べる数少ない日本の俳優の一人である。ただ、どうしても鼻につくのが、死んだ娘の成長後の幽霊を演じる広末涼子だ。せっかく、すべてを達者な役者で占めているのに彼女だけは、やはり表情の変化でしか感情を表現できない。ころころ変わる作った表情の変化がどうしても不自然に感じてしまう。
感動物の良くある手法に「夢おち」、「幽霊おち」があるが、これもその手法であり、先が簡単に読めてしまうのはやはり映画としては減点。どうせ幽霊にするなら、「異人たちとの夏」のように徹底的に絡んでもらいたい。
本で読めば、多分とても感動できるものだと容易に察しがつく。しかし、ラストの乙松の死への伏線など、きちんと役者が、セリフにはしなくても表情や間の含蓄深い演技で、多くを表現しているので、愛すべき作品には仕上がっていよう。